セブの夜ふけに暇つぶし

セブでのお気楽な生活を独断と偏見に満ち溢れて綴っていきます

セブ島で起業する日本人が急増している理由・後編

そんな勝呂さんはセブ島で起業した後、現在はハワイ、バンコクにもビジネスを広げています。とてもたくましいです。

 セブ島で英会話学校を経営していてつくづく感じるのが、セブ島留学にやって来る人たちには、起業志向が強い人が多い、ということです。英語を身につけるために、アメリカでもイギリスでもなく、日本国内ではまだまだ認知度が低いセブ島留学を選ぶこと自体、そうした傾向の現れかもしれません。



 そして実際、ここ数年、留学してからセブ島に残り、起業する人たちも増えてきています。私が知っているだけでも50社以上はセブ島で起業しています。業種は、英会話学校やIT企業、システム開発会社、レストランなど多種多様です。もちろん、全員が成功しているわけではありません。ただ、成功率は高いと感じます。実はそれには理由があります。


 理由の1つ目は、セブ島を含めた新興国での、日本人ならではの起業のメリットがあるからです。それは、世界第3位の経済大国の日本には、世界に誇れる仕組みやサービス、商品があるからにほかなりません。


 そして、それらは、日本人にとってはすでに「当たり前」でも、新興国では目新しかったりします。その結果、それらを新興国に持ってくることで、収益性のあるビジネスになりうることがしばしばあるのです。


■起業家同士の仲間意識も強い


 実際に、日本の飲食店では当たり前の冷たいおしぼりを出しているお店はセブ島で繁盛しています。また、飲食店だけでなく日本的なきめ細かなサービスをする美容室や、朝礼を毎日行っているコールセンターなども成功しています。タイムマシン経営ではありませんが、日本での成功モデルをアジアの発展途上国に移植すると成功する場合が少なくないのです。


 日本国内であれば、同じような発想をする日本人はたくさんいるでしょう。しかし、新興国などの海外に出ると、そうした「最大のライバル」である日本人が少ないのも、企業の成功率が高い2つ目の理由です。



 3つ目の理由は、起業コストの安さです。前述の横田さんも起業費用の安さについて話していますが、実際にセブ島の人件費は大卒で月給3万円程度ですし、賃料も安いので立地のいいショッピングモールなどにテナントとしてお店を出すことも難しくありません。今後はわかりませんが、現状では、日本にいるときよりも、はるかに少ない資本で起業し、ビジネスを軌道に乗せられるのも、セブ島を含めた新興国で起業する魅力といえるでしょう。


 さらに、筆者がセブ島での起業が成功しやすい最大の要因だと考えているのが、日本人の起業家同士の仲間意識が強く、お互いに助け合う傾向が強いということです。これが理由の4つ目です。たとえ同業種でライバル関係にあっても経営者同士はかなり仲がよかったりします。私自身、セブ島で英会話学校を展開する日本人経営者の多くと懇意にし、頻繁に情報交換をしています。


 新しい動きとして、2015年には、海外で起業する人のネットワークである「WAOJE(World Association of Overseas Japanese Entrepreneurs)」のセブ島支部が発足。日本人経営者たちが集まって定期的に勉強会やセミナーを開いています。法律や金融などの専門家、さらにセブ島以外の国で起業している起業家を招いて話を聞いたりしているのです。こうした場での交流も、新しい日本人起業家たちがセブ島でビジネスを軌道に乗せていくうえで大いに役立っているといえます。



 一方、海外ならではの大変さもあります。日本では考えられないコネ社会だったり、思わぬワイロを要求されたりします。外国人をだますことが当たり前の人たちがいることも忘れてはなりません。ただ、新興国で起業する際のこういったデメリットも先述の日本人起業家たちのネットワークによって解消されることがしばしばです。実際に、WAOJEの勉強会などを通じて、会社で起きた横領事件や詐欺の情報などを交換し、そこからフィリピン人との人間関係の作り方、許認可を効率良く習得する方法などを学びあっています。


                                      終


東洋経済オンライン記事より

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