セブの夜ふけに暇つぶし

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フィリピン貧困の連鎖 シリーズ4

貧困の連鎖が何世代にも渡って繰り返されるのは、フィリピンのなかに「貧富を生み出す構造」がガッチリと組み込まれているからです。


「貧富を生み出す構造」は、主に3つの側面から造られています。
それは、


1、歴史的な背景
2、働きたくても仕事がないという現実
3、歴史が育んだあきらめ
の境地の3つです。


3-1.歴史的な背景
フィリピンに貧富の格差が生まれた一番の原因は、その歴史に求めることができます。
フィリピンの貧富の差は、16世紀から始まる植民地時代に強制的に作られたものです。それは、スペインによる植民地支配から始まり、アメリカによる植民地支配でも継承されました。

なぜなら、異民族を奴隷のように支配するために、フィリピン人のなかに支配層と被支配層をつくることは、宗主国であるスペインやアメリカの利益につながったからです。


支配層を優遇して宗主国の意のままに従わせることで、反乱の恐れなく支配する構造を築くことができたのです、この当時の支配層は、現在のフィリピンの富裕層につながり、被支配層は貧困層につながっています。



また、支配層のフィリピン人とスペイン人の間に生まれた混血児が、裕福な一族を誕生させました、今日につながるスペイン系財閥です。

さらに、スペインやアメリカのビジネスを手助けするために中華系の人々が支配層に入り込み、中華系財閥が生まれました。


これ以降、フィリピンの経済界は財閥が既得権益を独占し、少数の資本家が国民の大多数を占める労働者を搾取するという悪循環が始まったのです。

支配層と被支配層を分けたのは土地の所有です、スペインは被支配層の一般住民から、父祖から受け継いできた土地を巧みに奪い、それを支配層やキリスト教会、スペイン人の役人などに集中的に持たせました。


こうして支配層は大地主となり、被支配層は土地を持たない小作人として搾取(さくしゅ)される構造が生まれたのです、それは、持つ者と持たざる者の違いとして、今日に至るまで大きな影響を及ぼしています。


大地主と小作人が存在するのは、戦前の日本をはじめとして各国で見られたことであり、フィリピンが特別なわけではありません。
しかし、フィリピンの場合、スペインとアメリカの圧力によって強制的に土地の分配が為されたため、他国では見られないほど極端な偏りが生じてしまいました。

国家が近代化を成し遂げる過程で、多くの国が農地解放を成し遂げています、日本も戦後、GHQの主導によって農地改革が強制的に進められたことで、その後の経済発展の礎を築くことができました。


ところがフィリピンでは、農地改革がほとんど進んでいません、植民地時代に植え付けられた大地主と小作人の関係は、今に至るもそのまま残されています。
スモーキーマウンテンなどのスラムは、地方で小作人として働いていた農民が生活苦から逃げ出し、仕事を探すために都会に出てきたことで生じています。

では、なぜ農地改革が進まないのかと言えば、大地主や財閥などの支配層が彼らの既得権益を失わないように振る舞っているからです。

フィリピン独立後は、支配層は一族のなかから政治家を輩出し、彼らの利益を代表させることに努めました。現在では、地方政治から国政まで、政治家の多くが支配層に牛耳られています。


有能な大統領として人気が高かったアキノ前大統領もまた、財閥の出身です、そのため、財閥を解体したり、農地を解放する政策には積極的に手をつけませんでした。
これまでも、マルコスをはじめ、農地改革に手をつけた大統領はいますが、そのことごとくが失敗に終わっています。

フィリピンの主要なビジネスのほとんどに財閥の息がかかっています。かくして、財界と政界は富裕層がしっかりと抑え、彼らの権益が侵されないように監視をする社会がつくられたのです。


財閥や大地主に代表される富裕層による既得権益と農地の独占と並び、フィリピンの一般住民を苦しめているのが、下級官吏にまで広がる汚職です。

フィリピンで汚職が一般化したのは、マルコス政権下といわれています、マルコス政権末期の経済的混乱が、不正を当たり前とする歪な社会構造を生んでしまったのかもしれません。


富裕層の権益を守るためのシステムとして、汚職が組み込まれていることにも問題があります。
この構造を突き崩すためには、富裕層の抵抗に負けないだけの力が必要です、豪腕で名を馳せるドゥテルテ大統領であれば、もしかしたらどうにかしてくれるのではないか、といった期待が貧困層の人々を中心に寄せられて当初泡沫候補から大統領選で見事に当選した訳です。

ドゥテルテ氏は、財閥とは無縁の大統領であるだけに、富裕層の顔色をうかがうことなく財閥解体と農地解放、そして汚職の追放を断行してくれるのではないかと注目されていますが果たしてどうなる事やら!?


                                 つづく

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