セブの夜ふけに暇つぶし

セブでのお気楽な生活を独断と偏見に満ち溢れて綴っていきます

変わりゆく在日フィリピン人たち その4

パブ勤めから介護職へ、変わりゆく在日フィリピン人たち


「働いていたお店からまた指名されると、ビザを取り直して戻れるんです。だからみんな半年間、必死で働くんです」


ふたりは言う。そういう事情にもめげずに、むしろ客の背中をたたいて一緒に笑うような彼女たちの明るさに救われた日本人は多かった。


規制が生んだ「偽装結婚」という手段

(カレンさんの店で語らうネリーサさんとベリンダさん。「昔のフィリピンの女はがんばり屋だったよね」と昔話に花が咲く)


潮目が変わったのは2004年のことだ。アメリカ国務省は「人身売買に関する年次報告書」の中で「日本の興行ビザが性的搾取の温床になっている」と非難。これを受けて日本政府は興行ビザの発給を厳しく制限し始めた。そのためフィリピンパブで働けるのは、日本人と結婚して「配偶者ビザ」を持つ、就労制限のない女性たちだけになった。


この頃すでに日本人と恋愛結婚していたネリーサさんとベリンダさんのような女性はパブで働けるが、興行ビザを取得して新しく入国してくる女性は激減。そのためフィリピンパブは衰退した……などと言われるが、実はそうでもない。興行ビザの代わりに、「偽装結婚」という手段が横行するようになったからだ。
ブローカーが、ホステス志望のフィリピン人女性とお金目当ての日本人男性とをカップルに仕立て上げて婚姻させ、配偶者ビザを取得させるという手口だ。表向きは結婚生活を装うため両者が同居する場合もあれば書面上だけのこともあるようだが、ホステスの女性は男性側に支払われる契約料などの名目で給料からお金を差し引かれ、手元にはわずかな額しか残らない。


ビザの規制によって、いわば搾取の形態が変わったわけだが、そのあたりをノンフィクション『フィリピンパブ嬢の社会学』(新潮新書)は克明に描いている。


『フィリピンパブ嬢の社会学』作者の中島弘象さん。作品は自らの実体験がもとになっている


作者の中島弘象さん(34)は言う。
「偽装結婚の期間は、昔は3年、いまは5~6年という契約でしょうか。その間は月6万~7万円の給料とチップでやりくりしなくてはなりません。契約が終わるとフリーになれますが、今度は配偶者ではなくなるのでビザをどうにかしなくてはならない。興行ビザがなくなっても、ホステスたちがビザや契約をもとにブローカーに縛られる仕組みは変わっていません」


それでも、彼女たちのたくましさと明るさは変わらなかった。作中でも、そして現実でも、「なんとかなるよ」と前を向き、故郷の家族のためにこの国で生き抜いてきた。


                               その5へつづく

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